そんな暗い気持ちでこの門出を潰したくはない。

「すぐに帰れるんだから!!
茜のことよろしくね?」

4つ下の妹のことだ。可愛くて仕方ない私の妹を1人、あの家に残していくことだけが、私の不安。

2つ上の兄は東京の体育大学に進学し、専ら寮生活に励んでいる。

だから、今あの家には、母と父と妹と祖母。それでも私の帰るべき場所なのだ。


「じゃ、ほんまに行くわぁ」

「うん。じゃーね」

そう言って、扉が閉まると、行ってらっしゃいじゃなくて、じゃーねと言ってしまった違和感に気づいた。

(これから、ここが家かあ)



冷めた家庭環境で育った。
だからこそ私は温かい家族を望む。

「よし!!とりあえず、恋!!」