聞こえてる。

わかってる。


それなのに…




「…もう行きますね。」



届かない、触れない。

わからない、もどかしい。




「………………っ……………て…………」


……今、声、出た?





「…結城さん──?」


見えてる、触れてる。

わかってる、…泣いてる。






「た………く…………ま………」



誰の声かと思う程に掠れた声は、確かに愛おしい名前を呼んだ。


「結城…さん…っ……」


珍しく子供っぽい。
立ち尽くしたまま泣きじゃくってる。





「…いいよ、おいで。」


鼻をかみ、涙を拭いて逞真は勢いよく抱きついてきた。

横になったままだったから受け止められたけど、座ってたら多分骨いってたなってくらい力強く。







「結城さん……結城さん…!もう、離さないっ……」



耳元で聴こえる涙声が胸を締め付けた。
…泣かないでほしい、逞真にだけは。