前髪で視界がぼやけて瞬の顔がよく見えない。
でもその前髪を直す動作はこの拘束では許されない。
「俺のモノになると言え、雅。」
「ならない。」
身体は売っても心まで売るつもりはない。
「…まだ足りないか」
毎日打ち込まれる注射も最初は気持ち悪いだけだったけど、最近では何も感じなくなってきた。
「俺のモノになれ、雅。」
「なら……な………─────。」
いつもそこで意識は途切れた。
注射を打たれれば話は続かない。
それなのに瞬は永遠と続ける。
「俺のモノになれ」、と。
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