「はぁ…っ、はぁ……」
ここは何処だろう…高層マンションがある以外、何件か閉まった店があるだけ。
コンビニもあと少し行くとあるらしい。
無我夢中で逃げてきたから、分からないところまで来てしまった。
「楓華〜?出ておいで〜?」
少し遠くから声が聞こえる。
「榎本 楓華ちゃ〜ん、怖くないからさぁ!」
……知らない男の声も、複数。
「おい、お前らはそっち探せ」
「はいはい。…見つかったらほんとに俺にも貸してくれんだろな?」
「俺が1番だけどな。」
「あいよ〜」
すぐ近くにいる。
…会話の内容は大体理解出来た。
なら尚のこと捕まるわけにはいかない。
「…っまずい、」
そう思った時にはもう遅く────。
「み〜つけた」
携帯を片手に持った柊の笑顔は不気味で、私は自分の携帯のディスプレイを見た。
“橘 柊”
その文字が出る度にドキドキしていたのに、今は嘘みたいに何も感じなかった。