「俺、榎本さんのこと好きなんだ。……その、付き合って…くれないかな?」
橘 柊。
少し色の抜けた髪に、流行であろう髪型が風に揺れる。
人差し指で頬を軽く掻きながら目を逸らすその仕草が、可愛いなと思えた。
「……私で、いいのなら。」
付き合うという意味が分からなかったけれど、この人なら教えてくれそうだと思ったから。
だから“付き合う”事にした。
「お似合いだよね〜」
「ほんとほんと!」
「くっそ…橘のなら手ェ出せねーよ!」
「まずアイツ以外誰も手出せねぇだろ……」
噂は一瞬にして広がった。
廊下で柊が私の手を掴み、上に掲げた時の恥ずかしさと嬉しさが込み上げていたあの時を忘れた日はない。