「俺はそんなにかっこよくないから。残念だったね。」
「あ、ごめんごめん、尚緒くんは顔より身長が欲しいか。」
「は?」
「うわぁー。ごめん、ごめんて。」
そう俺はバスケをやっているが身長が低い。バスケの中で
身長はめちゃくちゃ大切なのに。それが俺のコンプレックス。
大雅は野球をやっていて、身長は178cmある。それに比べて
俺は166cm。そんなことを考えながら凹んでいる俺を見て、
大雅は爆笑。
そんなことを思いながら校門に入ると、1人の女に目が
奪われた。桜を見上げる少女。その目に光はなくて、
なんか悲しみを含んだような辛そうな瞳がいつの間にか目に
焼き付いていた。
「ん?どーしたんだ。うわ!めちゃ、美人いるじゃん!なになに
もしかして惚れた?」
「んーん」
でも正直、綺麗だと思ったのはホント。
そう思ったことはぜってー大雅には言わねー。
「お!クラス見に行こーぜ!尚緒!」
「だな。」
「おー!尚緒!また1年よろしく!」
俺達は1年3組で同じだった。
そんなこったでもう、入学式。校長先生の話が長すぎて、
寝そうになってると、隣の女が目に入った。
こいつ、同じクラスだったのか。
多分染めてないであろうサラサラの髪は綺麗な栗色で制服から
出ている手はこれでもかってくらいに小さくて、
真っ白だった。ぱっちりとした二重の目にくるんとカールする
まつ毛はすごく長くて、メイクなんてしてないのに、とてもかわい
かった。
思わず俺は声をかけていた。
「ねぇねぇ。君、どこ中出身?」
って、これじゃナンパみたいだな。
目の前の子は少しビクビクしながらも答えてくれた。
「え、えっと、葉月中です。」
自分から女子に話しかけるのは多分この子が初めて。
なんか、不思議な魅力持ってんだよな。儚くて、守ってやりたく
なるような子。
「へー、そーなんだ。オレ、南原中出身の小城尚緒。よろしくね!」
そう自己紹介すると、彼女はふわりとした可愛らしい笑みで
「あ、えっと私は小暮海波……です。」
「ふーん。小暮ね、同じクラスだし、1年よろしくね?」
「う、うん!こちらこそ!」
次の日 ホームルーム
「じゃあ、クラスの新陸も兼ねて、席替えをする。」
「やったー!私、小城くんの隣がいいなー!」
「えー!私は榛名くんの隣がいい!」
うわー、そらくんと小城くんすごい人気だなー。
「俺、小暮の隣がいいなー」
「あー、確かにー」
え、私?どうしよう。怖い。いや!気にしない、気にしない。
結果私は窓側の後ろから2番目になった。
「やったー!窓に近い!あれ、隣君なんだ。えっとー……」
「あ……小暮海波です。」
「あー!!小暮ちゃんか!俺は桜井大雅!大雅って呼んでくれて、
いいよ!」
「あ、はい。」
「じゃあおれも海波ちゃんって呼んでいい?」
「あ、どうぞ。」
すると、
「ガタン。」
前はそらくんだった。
「あ、そらくん!席前なんだ、よろしく!」
「おー、海波か、よろしく。」
「さっちゃんいないの寂しいね」
「そうか?俺はあんなにうるさいヤツがいないと快適でいい。」
「はは、相変わらず毒舌。」
そらくんは普段は優しいがさっちゃんのにことになると、毒舌。
でも喧嘩するほど仲がいいってやつ。2人はお互いのことよく
分かってる双子だと思う。
「ねーねー。海波ちゃんと榛名ってどういう関係?」
大雅くんが聞いてきた。
「え、えっと。」
私が困っていると、
「海波とは家が近くて、幼なじみなんだよ。」
「へー!そーなんだ!」
「仲良いからてっきり付き合ってんのかと思った。」
「え?!」
「ごめん、ごめん。」
「おーい。盛り上がるのはいいがそろそろ授業始まるからしっかり
用意しろよー!」
そう言って担任の大木真白(おおきましろ)先生は出ていった。
「まぁ、これからしばらくよろしくな!海波ちゃんに榛名!」
「おう。」
「うん。」
キーンコーンカーンコーン
最後の授業が終わり、そらくんと帰ろうとすると、
「あ、ねーねー。2人のともせっかくだし、連絡先交換しない?」
「そらくん、どうする?」
「俺はいーよ」
「じゃ、私も大丈夫。」
「海波ちゃんってホントに榛名に懐いてんのな」
「えっ」
そんなつもり無かった。でもそらくんを頼りにしてるのはホント。
悩み事とか全然そらくんに相談しちゃうし。そらくんってなんでも
受け止めてくれて適切なアドバイスくれるからついつい頼ってしま
う。でもそんなふうに思われていたなんて。そらくんにも迷惑かけ
ちゃうからこれからは気をつけよう。
「俺の事、榛名じゃなくて蒼空でいーよ。榛名って女みたいで
やだし。」
「おー、OK!」
交換し終わって少し3人で話していると、
「大雅、帰ろうぜー。」
「おー!尚緒」
尚緒ってどっかで聞いたことあるような、と思い覗いてみると、
「あ、小城くん?」
「小暮?」
「なになに、お前ら知り合いなの?」
「違うよ。昨日ちょっと話しただけ。ところで大雅は何してたの?」
「あー、海波ちゃんと蒼空と連絡先交換してた!」
「そーなんだ。じゃあ俺とも交換してよ。」
「そらくん、どうする?」
「俺は別に」
「付き合ってんるの?榛名と小暮って」
「「ははは。」」
「え、2人してどうしたの?」
「それさっき大雅くんにも聞かれたの。付き合ってないよ。」
その後連絡先も交換して帰ることになった。
「じゃあ蒼空、海波ちゃん、また明日ー!!」
「小暮、榛名、じゃあ」
「さようなら。」
「おう。また明日なー。」
「じゃあ、私達も帰ろっか。そらくん!」
「そうしよ。咲希も連れてかなきゃな。」
「そうだね。」
2人で話しながら1年1組の教室まで行くと、
「あー、榛名ちゃんなら彼氏くんと帰ったよー」