そんなダサすぎるチキンハートの呪われた草食系男子の背中に「灰野くん!」と耳に心地のいいあの声が届く。


ドクン、と心臓が跳ねて、息をのんだ。


「何?」


何もかもを抑え込んだ声は多分楽しそうには聞こえないと思う。

なんで俺、普通に喋れないんだろう。


「あのね……あの」


もじもじと言葉を飲み込んでしまった藍田さんをナギが覗き込んだ。


「俺が言おうか?」


ふるふると首を横に振る小動物みたいなあの子に鼓動が速まって悔しい。


ナギはいつからそんな近いポジションにいんの?


「ファーストキ……だめ、やっぱりナギちゃん言って……」


ナギを見上げる震える瞳。


熱のこもった表情でナギを頼る。


そんな顔を向けられるナギがどう思うかくらい、藍田さんわかんないの?


ドクドクと心臓が暴れて、怒りがわいてくる。



「ちゃんと藍田さんが言ってよ。ナギに甘えんな」



俺に甘えてくれたことなんかなかったくせに。