進もうとした足が止まって、地面を踏みしめたまま硬直する俺って、一体なんなの。


―――草食系男子?


そんなわけない。花とつきあってたときはガンガン行けた。


花にはなんでもうまくやれたんだよ。
もちろん花のことはちゃんと好きだったにも関わらずだ。



話すのも、聞くのも、ハグも、キスだって。
初めて花の服を脱がしたときでさえ、俺は平気でこなしたのに。



藍田さんとは……同じ場所に存在するっていうことでさえ危うい。


なんでこうなんだよ。


俺、知らないうちにそういう呪いでもかけられた?

ってファンタジー。


「……あっ、灰野くん!」


小さな声が耳に届いて、ドキッとした。


幼稚園の頃は藍田さんの声が好きだったなって、一瞬思い出す。


藍田さんの視線とぶつかって、藍田さんが先に逸らした。


「あれー灰野どうしたの?」


ナギはポケットに両手を突っ込んで、へらっと笑いながら首を傾げる。



奪えって、頭の中で山本がそう言うけど。


「別に。サボり」


「もしかして俺らの話聞いてたー?」


「いや?」


何にも聞いてませんけどって、しらを切って二人を素通りする。


……ださ。

山本の言う通りだ。