「おい! 床に吐けよ!」


カズヤにそう言われ、あたしは口元をぬぐって振り向いた。


カズヤたち男子は倉庫内を探し回っている。


「ちょっと……なにを探してるの?」


嫌な予感がしてそう聞いた。


「前歯を抜くための道具だよ。なにか、使えるものがあるかもしれないだろ」


イツキがそう答えたので、あたしは唖然としてしまった。


「なに考えてるの? まさか、本当にやるつもり?」


「やるしかないだろ。死にたくないならな」


イツキは答えながらも手を止めない。


その額には汗が滲んで浮かんできていた。


みんな、本気なんだ。


本気でホナミの前歯を抜こうとしている。


「嫌……嫌……」


ホナミの呟きが聞こえてきて、慌てて1人で震えているホナミの元へ駆け寄った。


「大丈夫だよホナミ。きっと、助かるから」


そう言ってホナミの体を抱きしめた。