「あぁ。でも今回は……30分だ」


カズヤがそう呟き、唾を飲み込む音が聞こえて来た。


ホナミは相変わらず泣きじゃくっている。


30分で、ホナミの前歯を全部抜く……?


想像しただけで体中が冷たくなった。


そんなこと、できるハズがない。


それに、ここに前歯を抜くような道具があるとは思えなかった。


「いやぁ……死にたくない……死にたくないよぉ……!」


ホナミは涙とヨダレで顔をグチャグチャに濡らして叫ぶ。


綺麗なホナミは、今はもうどこにもいなかった。


本当に、このカウントダウンが終ればホナミも死んでしまうんだろうか?


ミホと同じように……?


そう考えた瞬間強烈な吐き気を感じ、あたしは倉庫の隅へと走った。


なにが入っているのかわからない袋を開け、その場に嘔吐してしまう。


昼ご飯を食べてから随分時間が経っているから、胃の中はほとんど空になっていたのは幸いだった。