「ちょっと、カバンくらい自分で持ちなよ」


あたしは咄嗟に口を出していた。


「あぁ? お前に持てなんて言ってねぇだろうが」


「そうじゃなくてさ……」


「ユウ。大丈夫だから」


言い返そうとしたあたしをミホが遮り、そのままカズヤの鞄を手に持った。


「ほらな。本人が大丈夫って言ってんだから、口出ししてんじゃねぇよ」


怒鳴るような勢いで言うと、カズヤは1人ズンズンと先に進んで行ってしまった。


あたしは呆れてカズヤの後ろ姿を見つめる。


「じゃ、あたしはミホの鞄を持ってあげるね」


ホナミが、悪くなった空気を元に戻すようにそう言って、ミホの鞄を持った。


その光景に胸の奥がホッとする。


「それじゃホナミの鞄をあたしが……」


言いかけた所で、前方のカズヤが1つの教室の前で立ちどまったので、あたしは伸ばした手をそのまま引っ込めた。


どうやらもうゲーム研究会の部室に到着したみたいだ。