「・・・・・・ちょっと、来てくれる?」

「?はい」

琴葉先輩から保健室の外に連れ出される

夏を感じるようになった風が頬を撫でた

廊下には私と琴葉先輩だけ

なぜ連れ出したのか

「花音はね、昔化物に襲われて、姉を亡くしたの」

「・・・・・・っ!」

亡くした

化物の、せいで

「だからあの子は、お姉さんを殺した化物が許せない。同時に、弱い自分を憎んだの。当時、彼女はまだなりたての魔法使いでしかなかったから」

悲しげな表情で、花音さんの過去を語る

花音さんの生い立ちは、自分に似ている

私もあの頃はまだ魔術師ではなく、魔法使いだった

母は魔導師で、母と共に参戦することが条件で

そうでなければ弱い私は死んでしまうから

だけど

私が弱いせいで、母は死んだ

・・・・・・そっくりそのまま。似すぎている

「だから花音は強くなったの。魔法協会で初めてあの子を見た時、殺気立ってたの」

「化物に対しての、恨み、ですか」

「そう。恨めしげな目でずっと見てた。私はね、花音を変えてあげたいと思った。だから、この学園に来て、生徒会に入るよう勧めたの」

いつもの琴葉先輩らしくない表情

「だから花音は、もっと魔術師が増えて欲しいと願ってる。化物に対応出来る人が増えて欲しいって。じゃなきゃ、またお姉さんみたいに死人が出てしまうから」

・・・・・・私が入ったところで、魔術師が増えるわけではない

でも、私が入って、花音さんの心が少しでも安らぐなら

魔法協会に、たとえ加入しようとも

私は花音さんを放ってはおけない気がした

「・・・・・・わかりました。入ります」

「ほんとっ?!ありがとう!」