「花音、どう?」

「全く問題ありません。そうですよね、古野先生」

「えぇ、これでもかってくらい、完全に治癒されてるわ。すごい使い手もいたものね」

ベッドに寝かされている大郷くんと、それを取り囲むように集まる女の子───花音さんと、琴葉先輩

そして何か事情を知っていそうな養護教諭───古野先生

魔術のこと知っているらしい

というか、それを仄めかすようなことを今言った

「だいぶ呼吸も落ち着いてる。でもこれ、全くの初心者さんがやったのよね」

ちらりと、一歩後ろにいる私を振り返る3人

全くの初心者ってところには訂正が必要

まあ、しないけど

「はい、そうです」

「前に魔術を習ったりとかは?」

「一切ないです。娯楽小説を思い出してなんとなく。運動神経はいい方なので」

「そう・・・・・・才能かしら」

思案に暮れる古野先生

一方ほかの2人は

「初戦で化物を倒しちゃったからねー。やっぱり芽衣ちゃん、入るべきだよ生徒会っ」

「そうですよ、小鳥遊さん。入ってください」

琴葉先輩と花音さんからも勧誘される

・・・・・・入る、つまり私は間接的に魔法協会に所属することになる

2人の指をちらりと見る

右手の薬指にはめられた指輪

これは紛れもなく、魔法協会に所属している魔術師が身につけるもの

私は絶対に、入らないと決めたから

「何度も言いますが、お断りします」

「・・・・・・どうして?」

「私は化物に時間を割くわけにはいきませんから。他にやることが、ありますから」

淡々と断ると、心なしか花音さんは少し
悲しげだった

なんだろう。私何かしただろうか

ただ勧誘を断っただけなんだけど