「ただいま」

返事の帰ってこないただいまを、家に告げた

私の声に反応する人はいない

今は一人暮らしだもの

「はぁ・・・・・・」

私が住んでいるマンションは、学校から徒歩20分ほどのところにある

一言で言えば・・・・・・高級マンション

なぜそんな場所に私がひとりで住んでいるのかというと、父がいるから

母はあの日、私を庇ったせいで亡くなった

父とはあまり会ったことがない。あるとしても、魔法協会の中で、階級の上の存在として

父と娘として触れ合ったことは無いに等しい

その父が、父らしくしてくれることといえば、この家に住み、仕送りをしてくれる程度

母がいた時は、幸せだった

母がいなくなってから、父は前以上に冷淡になってしまった

元々も冷たかったのに、さらに酷くなった

もう、どうでもいいけれど

「メール、来てる」

玄関の廊下にバッグを置いて、スマホを見れば、メールアプリの通知がきている

父からだ

なぜ、来なかったのかと

・・・・・・言うべき、なのか

まず、父が知っているのかも定かではない

仕方ない

化物がいたから掃滅していたと言えばわかってくれるか

謝罪の文章と理由を無表情で打ち込み、送信する

父とのやり取りは疲れる

・・・・・・ご飯、作らなきゃ

私は靴を脱いで、バッグを拾い上げて自分の部屋に向かう

こんなところに一人暮らしなんて、贅沢だ

友達を10人呼んで泊まらせても余裕で入るレベル

呼ぶ友達もいないけれど