「はい。そこ、ストップ。」
私が桜河を呼び止めると、桜河軽く舌打ちをして逃げようとする。
もちろん、私が大人しく逃がすわけなんかない。
廊下まで追いかけて、やつの腕をがっしりと掴んだ。
「桜河、練習は?」
「…休み。」
「嘘つくな。
今日は午後から練習でしょ?」
「だから、なんで水泳部の練習日程把握してるんだよ。怖ぇわ。」
〝ドン引き〟という顔でこちらを見る桜河を引きずりながら、教室の方に連れて戻る。
「だいたい…あんたは───」
「…おい、前見て歩け───……」
私が桜河の方を振り返りながら歩いていると、誰かと肩がぶつかる。
「あ…すみませんっ。」
「ほら。言わんこっちゃあない。」
よそ見していたことを謝ると、ぶつかった彼女はゆっくりと顔を上げた。