「お母さんが亡くなってすぐ、お父さんは桜河を置いて東京に行った。
だから桜河はずっと…自分は父親に捨てられたと思っとるんよ。」
〝捨てられた〟……?
そんな話、今まで桜河から一度も…
「あの子は、誰かが自分から離れていくことに人一倍敏感なのかもねぇ…」
───『結局お前も、俺を捨てんのかよ…』
あの夜、桜河はたしかそう言った。
かき消されそうなほど小さな声で…
…私、桜河のこと何もわかってなかった。
いつも自分のことばかりで、桜河のことを分かろうともしていなかった。
桜河はいつでも、私のことをわかろうとしてくれていたのに…