「…今から香純と話してこい。」
桜河はすぐに顔を上げてそう言った。
予め命令を考えていたかのように。
「…それが ‘ 挑戦 ’ ?」
「どうせ、まだこいつと話してないんだろ?
…言い訳くらいしといてやれ。」
私と柊吾に、2人で外に出るように顎で促す桜河。
「ほら、早く行ってこいよ。」
「行こう、香純。」
「う、うん。」
柊吾に腕をひかれて立ち上がる。
部屋を出る直前に桜河の方を見ると、彼はこちらに向かって親指を立てていた。
私は口パクで‘ ありがとう ’とだけ伝えた。
私の言葉に微笑んだ桜河の表情は、なんだか少し寂しげだった。