そこには


「……秋兄」


秋兄がいた

……リビングのドアが開く音も
すぐ傍にいた秋兄の気配にさえも

気づかないくらい考え事に熱中していた


「おかえり」

「ああ。ほら」


バイトから帰ってきた秋兄は
持っていたペットボトルのジュースを俺に差し出す

さっき俺の頭に当たったのはどうやらこれだったみたいだ


「……ありがと」

「…渡したくないって言うくらい本気で好きなら
少しでも行動しろ」


受け取った俺に
俺の独り言を聞いていた様子の秋兄は
珍しく真剣な顔で言葉を向けてきた


「どんな結果になったとしても
動けば何かしらの変化はある
何もしないで変化のない今よりいい」

「…」

「何もしないで後悔するより
何かして後悔する方がいいだろ?」

「…」

「がむしゃらになるって言ったのはお前だろ」



『なら、俺はきっとがむしゃらになるしかないんだろうな』


……いつか言ったその言葉を秋兄は覚えていた