「買わないの?
ずっと見てたから、気に入ったのかと思ったけど」

「猫、好きで
でも、最近買いすぎちゃってたので…」

「…」


名残惜しそうにネックレスに視線を落とす私を見て、鴻鳴先輩は近くにいた店員さんに声をかけた


「すみません。これください」


そう言って指差したのはまだ私の手にあったそのネックレス


「え、せ、先輩……っ?」

「あ、そのままで大丈夫です
値札だけ切ってもらえますか?」


慌てる私をよそに先輩は取り出した財布からお金を出して、店員さんに渡す

店員さんは、「失礼しますね」と私に声をかけて
持ってきたハサミでネックレスの値札を切った


「…鴻鳴先輩」

「似合うと思うよ。それ」


呆然とする私に鴻鳴先輩はにっこり笑った