ん? なんだ、なにかおかしなことを言ったか?

彼女の様子を見て、やはりなにかがおかしい、とようやく俺もそこで勘付いた。

「もしかして、水城さん……私を姉の“愛美”と勘違いしてませんか?」

「……は? 姉、だって?」

寝耳に水とはこのことだ。俺も食事の手が止まる。そして、異様な沈黙に今までの空気が一変した。

「姉って……じゃあ、君は、一体誰なんだ?」

そう言うと、彼女は目を丸くして驚いた顔をした。

「水城さんの言っているイルブールでピアノ演奏しているのは、姉の愛美のほうですよ。私はその妹です。私たち一卵性の双子でよく似てるって言われるんですけど……」

な、なんだって!? 双子? そんなこと、そんな……。

見合いで浮かれていた俺の頭が一気に冷めていくのがわかった。

イルブールでピアノ演奏しているあの彼女だと思っていた目の前の女性が、まさか……妹のほうだったなんて。とんだどんでん返しだ。

どうりでいつもと雰囲気が違うと思った。しかし、ここまでそっくりだとは……不覚にも言われなければ気がつかなかったかもしれない。