狭い鳥籠を瑞季と二人で飛びだす。大通りまで走って、そこからバスに乗り込む。丁度タイミングよくバスが停まっていて、助かった。


 後部の席で、荒くなった呼吸を整える。額にはうっすらと汗。瑞季が天井を仰ぎ、おかしそうに吹き出す。


「こんなに走ったの久しぶりだし、走るのって、案外楽しいんだね」

「走ったことないの?」

「あーかもね。おれ、体力ないし。本気で走ったの、今日がはじめてかも」

「私はしょっちゅう走ってるよ。蝶追いかけたりーー……」



“かなたは変だよ。ついてけない”



 大きく心臓が音を立てる。嫌な記憶は、この身体に宿っていて死ぬまで消えない。


ーーでも。どうして思い出すの。こんなにも今、楽しいのに。