次は終点、蝶丘とアナウンスが流れる。車内に残る乗客は、いつの間にか二人だけになっていた。あんなに人であふれていた光景とは打って変わって、ここは、いつ来ても閑散としていて居心地がいい。



 蝶丘は小高い丘の、公園がある場所。辺りには店も遊具もない。ただひたすら眺めがよくて、ベンチがひとつあるだけ。


「ここは変わらない」

「よく来るの?」

「昔は姉さんと。前までは、付き合ってた人と」

「そんな“特別な場所”に、連れてきてもよかったのか、おれを」

「……美しい旅路の終わりには。だって、ピッタリでしょう?」



 コバルトブルーの翅。



 冬のよく晴れた澄んだ空に蝶の舞う美しい楽園が、そこには広がっていた。夢か現か――胡蝶の夢を、思い出す。つい最近授業でやったせいだろうか。




これ以上、言葉はいらなかった。