私は不安と恐怖から眠れずにいた。布団に包まって、目をずっと開けて過ごしていた。
 また彼女が来るかもしれない。
 また、殺されかけるかも知れない。
 そんな不安の中で、私は体を抱えて震えていた。
 その時、急にぐらりと視界が揺れた。

『誰だ?』

 私は何故かそう呟いた。
 ベッドから上半身だけで起き上がると、頭の中に、ウロガンドが浮かんだ。銀色の龍が自分の尾を銜え、丸い形を作り、それが時計の縁になっている。窓の上にあるそれは、厚みがあり、壁から少し浮くようにかけられ、チクタクと時を刻んでいる。
 四時四十分――四時四十分――繰り返し、繰り返し、針がその時刻を示す。

『あなたは……どうしてここに?』

 私はまた、何故かそんな言葉を口走った。
 頭の中を、フラッシュのように、黒い人影が現れては消える。
 私は何故か、その人物に恐れを感じなかった。
 誰なのか、知っている気がした。
 その時、雷鳴の音が響き渡った。

『何をする!?』

 私はそう叫んだ。
 黒い影が、ぱっ、ぱっ、ぱっと、点滅しては消え、私に向って駆けてきた。
 その手には、光るなにかが――。

『あんな女の子供など!』