ぼんやりとした意識が覚醒した時、私は宙に浮いていた。
地上の遥か上空。人がペットボトルくらいに小さい。足のちょうど真下に、トラックが止まっていた。その周囲を行きかう人は、なにやら狼狽した様子だった。
「もしかして私、トラックに轢かれて死んじゃったの?」
愕然とした瞬間、叫び声が上がった。
「ゆり、どこに行ったの!?」
「どこだ、ゆり!?」
お母さんとお父さんが、必死になって私の姿を探していた。運転手らしき男の人は、怪訝そうにしきりに首を傾げている。
(私、死んだわけじゃないみたい)
ほっと胸を撫で下ろす。
(今なら、なんか行ける気がする)
私は、小さくなった両親を見据えた。
「さようなら……元気でね」
そう呟くと、白い光が突然私を包んだ。赤希石のブレスレットが弾け飛ぶ。赤い玉は、バラバラと雨のように、地上に降っていった。
私の意識は薄れていく。
降り注ぐ石の雨を不思議そうに両親は見上げた。そして、はっとした顔をした。そんな気がする。意識が白く染まって行く。
そんな中で、強く、強く、アニキのことだけを想った。