私は、病院のベッドで目覚めた。
目が覚めた私のそばには、お母さんがいて、驚いた表情を浮かべた後、突然泣き出した。
「どうしたの?」
私が、ぼんやりとした意識の中、そう投げかけるとお母さんは泣きじゃくりながら顔を上げた。
「どうしたのじゃないわよ。半年以上も行方不明で……この子は、本当にもう!」
お母さんは怒りながら、私を抱きしめた。
わんわんと子供のように泣きじゃくるお母さんを見て、心配させてたんだなと、改めて反省した。
「ごめんなさい」
私はぽつりと謝って、そのあとお母さんと一緒になって泣いた。
私は半年以上行方不明で、つい先日、学校へ行く通学路で倒れているところを発見されたらしい。
たまたま顔見知りのご近所さんが発見してくれたから、すぐに身元が判明したみたいだ。
警察には届けてあったけど、身元が分かりそうな物は制服しかなかったから、ご近所さんが発見してくれなければ、身元が分かるまでにまだ時間が掛かっただろうと刑事さんが言っていた。
事件性がないかどうか、刑事さんにあれこれと話を聞かれた。
異世界に行っていたなんて言っても信じてもらえないだろうから、私は家出をしていて、倒れたのは風邪をひいていたからだと嘘をついた。
持ち物についても色々と訊かれた。
着物や、ブレスレットなど、高価な物を高校生が持ってるなんておかしいって、不審な目で見られたけど、知らない人に貰ったで押し通した。
両親には家出ということで、ショックを与えてしまったみたいだけど、本当のことを言うわけにもいかない。
いっそ、記憶がなくなってたら良かったのに。
そう思って、ふと、心がざわついた。
本当は、忘れたくなんてない。
軽く思っただけなのに、心がこんなにも重くなる。
「……逢いたいな」
ぽつりと漏れた本音は、唇を噛んで封印した。