「お前!!何なんだ!俺の邪魔しやがって!」

天音の帰った後も、月斗の怒りはまだ収まらなかった。
雨が降り出し、月斗はもう濡れていたが、かずさは、帰りたい気持ちを抑えこみ、軒下で何とか雨を避けていた。

「天音は何も知らない…。」

かずさは、雨が溜まっていく水溜りをただじっと見つめていた。

「あ?」
「あなたは知ってるの?なぜ、青が城にいる事を選んだのか…。」
「……。」

しかし、そのかずさからの鋭い指摘に、月斗は何も答えられない。

「あなたの言う通りなのかもしれない…。」
「は?」
「天音のしている事は、破滅への道を作っているだけなのかもね…。」

ピカー、ゴロゴロ
雷は先ほどよりも、こちらへ近づいてきているようだ。

「天使教がいるかぎり何にも変わらない。そう、この国は変わらない。」

かずさは、やっぱり月斗の方を見る事はなく、今もどこか一点を見つめている。


「青の目は、もうほとんど見えなくなったわ。」
「え…。」
「その事を天音は知らない…。」


ザ―――――


雨脚はどんどん強くなり、軒下にいるはずのかずさの足元に、また新しい水溜りができていた。