「ハァハァハァ。」

天音は、そのメモに記してあった場所へと、息を切らして走っていた。
なぜなら、そのメモには、そこで月斗が待っていると書いてあった。
誰が書いたかもわからなかったが、それが事実ならすぐに行かなければ。
なぜか、天音は直感的にそう感じた。

「いた!月斗!はぁはぁ。」

方向音痴の天音も、なぜかこの時ばかりは、全く迷う事なく、月斗がいる路地裏にすぐにたどり着いた。

「誰かがメモをくれて、月斗が待ってるって。」
「…。」

月斗には珍しく、大人しくそこに立っていた。

「どうしたの?何かあった?」

天音は、月斗が自分を呼んだのには、きっと何か訳があるのだと考えていた。
月斗と交わした「彼のお願いを何でも聞く」という約束ももちろん覚えていたし、彼の力になれる事があるのならば、天音は何でもしたいと思っていた。

「お前…青と会ってるんだろ?」

月斗がやっとの事で低い声を絞り出した。

「え…。月斗、青を知ってるの?」

天音は、月斗の口からその名前を聞くなんて夢にも思っておらず、目を丸くし驚いて見せた。
(まさか、月斗と青が知り合いだったなんて…。)
二人の接点が天音には、まるで想像できない。

「お前アイツと、どうやって会った?」
「え?えっと…。お城で、たまたま?」
「たまたま?そんなわけねーだろ!」

月斗の鋭い視線が、天音に突き刺さる。
今日の月斗は、いつもよりもさらに苛立っている。それは、天音にも手に取るようにわかる。
しかし、なぜ彼がこんなに苛立っているのか、それは天音には全くわからない。

「でも…青は私の事知ってるって…。まるで私の事をずっと待っていてくれたみたいな…。」

天音は、月斗の気迫に怖気づきながらも、青と初めて会った時の事を、包み隠さず彼に伝えた。
それが、月斗の欲しい答えかどうかはわからないが…。

「お前を待っていた?」

天音のその答えに、月斗は思いっきり顔をしかめた。