「こうなったら、天師教さんに頼むしかない!」

すると突然、天音がまた、突拍子もない事を叫びだした。

「は?」
「え?」

そんな天音の突拍子のない考えに、華子とそして星羅までも、声を上げてわかりやすく驚いて見せた。

「だって、天師教さんが一番偉いんでしょ?士導長様にダメって言われたんだから、天師教さんに頼むしかないじゃない。」

天音はどこまでも本気だった。
いくらこの城で修行をしたところで、村育ちの天音の常識のなさが、すぐに解消されるはずはない。
彼女の子供のような単純な考えは、良くも、悪くも、残ったままだった。

「いやー、いくらなんでも。」

さすがの華子ですら苦笑いを浮かべ、困惑の表情を見せていた。

「天音…。天師教は!」

コンコン

星羅が、何かを言いかけたその時だった。タイミングよく、部屋の扉をノックする音がした。

「誰だろう?ハーイ。」

そのノックの音に、一番早く反応したのは天音だった。天音はすぐさま扉の方へと向かい、扉を開けた。

「あれ?」

しかし、扉を開けてみると、不思議な事に誰の姿も見当たらず、天音は首を傾げた。

「ん?」

すると、天音の足元に、一枚のメモが落ちている事に気がついた。
そして天音は、そのメモを手にとってみた。するとそこには、天音でも読める簡単な一言が書いてあった。

「天音?」

黙ったまま、誰もいない扉の前で佇む天音に、華子が不思議に思い声をかけた。

「ごめん。私、ちょっと行ってくる!」
「え?」

そう言って、天音は勢いよく部屋を飛び出して行った。

「え?天音ー!?」

華子は、突然部屋を出て行ってしまった天音を、呆然と見送るしかなかった。
一体彼女に何があったというのだろうか?
しかし、今となっては、それを知る術はもうない。