涙でぼやけかかる視界で楓馬君を見ると、想像とは全く違う顔をしていた。
え、もっと困った表情をしてるかと思った。

なに、その呆れた顔は。

「おい、勝手に殺すな。

あー、そういうこと。
それで今日1日やけに素直だし優しかった訳だ」

混乱。
今度は私の方が話が見えてこない。

「え…、え?
どういうこと?」

「こうでもすれば、あんたが俺のものになるって思ったんだろ。神谷の考えそうなことだ」

神谷さんの考えそうなこと…。
これは全部、神谷さんの作り話ってこと?

「楓馬君は死なないってことですか?
来年も?その先も?」

「当たり前」

なんだ、良かった。

ホッとして力が抜ける。
しゃがみ込んだ私の頬に手を添えると、強引に上を向かされた。