体育の授業が終わり、私は運悪く先生につかまった。

そしてボールを片付けることになった。

仕方なく集めたボールを体育館倉庫に運ぶ。

ボールをカゴに戻していると、倉庫の重い扉が閉まる音がして。

振り返ると拓磨がいた。


───カチャン。


今、カギ閉めた?


「どうしたの、拓磨」

「やっと2人きりになれたね」


え?


「これで心春を独り占めできる」


どうして拓磨は、そんな甘い言葉を吐くんだろう。

いつも急で心臓に悪い。


私が手に持っていたボールを拓磨に奪われたと思ったら、すぐに床に落ちて。

そのボールを目で追っている隙に、唇を奪われた。


「…拓磨っ」

「もうちょっと我慢して」


そう言って、いつもより強引に唇を重ねてくる拓磨。

我慢だなんて全然思ってないけど。

息が苦しい…。


「…拓磨っ」


私が拓磨の背中を叩くと、唇が離れた。

その隙に大きく空気を吸い込む。


「次も移動教室だから早く着替えないと…」

「俺と移動教室、どっちが大事?」


拓磨は女子がよく言う、“私と仕事どっちが大事なの?”的な感じで聞いてきた。


「なんで移動教室と拓磨を比べるの?」

「じゃあ、訂正。





俺と立花、どっちが大事?」