わたし、桝田くんのこと誤解してた。


「あのね。もし、よかったら。これからも話、聞いてくれないかな」

「断る」

「お願い。ちゃんと女を磨くから……!」


 眉間にシワを寄せて睨まれる。

 わたし、そんなに信用ない?


「それで、女子力あがったら。そのときは。キスしたくなる雰囲気の作り方、教えてよ」

「キモ」

「……っ」

「オマエみたいなのに好かれたマサオミってやつが。気の毒だな」


 やっぱりイヤなひとかもしれない。

 そしてマサオミくんの名前、ちゃっかり覚えちゃってるし。


「つーか。はやく教室戻れよ」

「アッ!? もうこんな時間……!」


 授業開始、1分前。


「やっば……」
「チリトリと後片付け。しててやるから」


 …………え?


「い、いいの?」

「走るのカメより遅そうだからな」

「失礼な。カメよりははやいよ!……ウサギよりは遅いかもだけど」

「遅いんかい」


 へんなの。


「あと、よろしくね」

「はいよ」

「……ありがとう!」

「はよ行け」


 次の授業は、サボるのに。

 掃除はやっておいてくれるとか。