「最後に、これするよ〜」


 ノアさんが手に持ってきたのは、線香花火だった。


「あ、わたし。線香花火。大好きです!」

「相変わらず貧乏くせえな」

「そ、そんなことないから……!!」

「まあ。コトリらしいといえば。コトリらしいわな」

「うちは、別に貧乏ではないよ?」


 普通だよ。たぶん。


「わかってるっつーの。貧乏ならあんな立派な大型犬なんて飼えねえだろ」


 そういうもの?


「小遣いでやりくりしてるオマエ見たとき。ああ、親がしっかり管理させてるんだなって思った」

「そんなこと考えてたんだ」

「金があるのと。うまく使うかどうかは、別だ」

「うーん。そうなのかな?」

「古都の母さんに。……嫌われなくてよかった」


 まだそんなこと言ってる。


「だけど線香花火が好きなんて変わってんな」

「なんで?」

「しょぼいだろ」


 んー、わたしは、そう思わないけどなあ。


「儚くて、綺麗で、弱々しくて。それでも粘り強くて。なんか、よくない?」

「はは」

「なんで笑うの」

「それ。俺みてえだなと思って」