「人のオンナ口説くなや」


 やってきた桝田くんは――


「つーか。なに勝手に触れてんの」


 浴衣姿で。


 わたしをノアさんから引き離すように、立ち上がらせる。


「桝田くんも着たんだ!」

「わりいか」

「悪くない! すごくカッコイイ!!」

「……あっそ」


 あ、照れてる。


「じっとしてろ」

「へ?」

「動いたら。刺すぞ」


 …………!?


 刺す、なんて言われたら。

 そりゃあじっとしてるしかないけど。


 なにをされるのかとヒヤヒヤしていたら、


「完成」


 頭に、なにか乗せられた。


「ちゃーんと、飾り用意してたんだ?」


 と、ノアさんが鏡を開いてこちらに向けてくる。

 三面あるのでサイドも確認できるのだが――


「……素敵」


 鏡に映っていたのは、髪をアップにした、わたしの。

 頭についている、髪飾り。