「落とした、なんて。そんな。自然と惹かれあったと……いいますか」

「かわいー。照れてる」

「最初は、険悪なムードさえ流れていたはず、なんですけど」


 口喧嘩みたいなことして。

 なのに。

 人生、なにが起きるかわからないもんだ。


「頭がちょっと寂しいね」


 ん? アタマ……?


「髪、ボクがやってあげるよ」

「え?」

「任せて」


 ソファにかけると、ノアさんがヘアピンやゴム、クシを持ってやってきた。


「ヨシヒサのやつ。髪留めも一緒に用意しておきなよね〜?」

「いや。そんなこと……」


 背後から、ノアさんに髪をイジられている。

 鏡がないのでどんな状態かはわからない。


「綺麗な髪だね。柔らかくて」

「癖毛が。気になります」


 だから、ノアさんや桝田くんみたいなサラサラストレート、憧れる。


「いいじゃん。かわいいよ?」


 ノアさんって、すごくモテそうだな。


「コトリは。この浴衣を世界一かわいく着こなす女の子だね」


 お姫様気分にするのが上手い、というか。

 まさに王子様。


「つい抱きしめたくなっちゃうけど。ヨシヒサに殺されちゃうから。やめておこう」


 ノリは、やや軽いとは思うが。