「ああ。それ、着てきたんだね」


 桝田くんの部屋にあった“アレ”って、浴衣のことだったんですね。


「上手に着たね」

「いや。これは。……桝田くんに、お願いしました」

「へえ。ヨシヒサが」

「桝田くんって、すごいですよね。なんでもできて」

「できないできない」

「…………え?」

「赤ん坊の頃から使用人がついてた子だよ? いくらヨシヒサが器用な男だからって。調べて練習しなきゃ、女の子に浴衣なんて着せられっこないよ」


 そうだったの?


「てっきり。着付けの勉強、したことあるのかと」


 こんな家に住んでいるのだ。

 なにを習っていても不思議ではない。


「コトリのために。頑張ったんでしょ」

「わたしの、ために……」

「どうやって落としたの? あの、捻くれた男を」