開けてみてびっくり!!
「っん、な、何!?
大和さん!!」
私はもう、恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。
「だって、いるだろ?
昨日の洗濯物から入れておいた。」
そう、袋の中身は、私の下着。
「いくら、大和さんでも、触っていい物と
悪い物があるの!!」
憤慨する私に、大和さんは涼しい顔で答える。
「え?
だって、それ、いつも俺が脱がせてるけど?
由里子、今まで文句言ったことないだろ?」
んんーーー!!!
「そうだけど、違うの!!」
大和さんは怒る私の隣に座ると、
「ごめん。持ってこない方が良かった?」
と肩を抱いて耳元で囁いた。
すると途端に力が抜けて、どうでもよくなってくる。
「そうじゃないけど…
大和さんが親切心で持ってきてくれたのは
分かるけど、でもね、大和さんに下着を
見られるのは、やっぱり恥ずかしいの。
できれば、お泊まりは内緒にしないで
教えてほしい…です。」
私が言うと、
「分かった。
じゃあ、次回から、そうするよ。」
と大和さんは答えて、そのままちゅっと私の唇にくちづけた。
もっとして欲しくて私は腕を大和さんの背中に回す。
もう一度、大和さんの顔が近づいた時、ピンポンとチャイムが鳴った。
「失礼致します。お料理をお持ちしました。」
廊下から声がかかる。
はぁ………
私たちは、顔を見合わせると、お互いの顔に残念そうな表情を見つけてくすくすと笑い合う。
大和さんがさっと立って、
「どうぞ。」
と声を掛け、入り口の引き戸を開けると、仲居さんたちによりお料理が座卓の上いっぱいに並べられた。
「ごゆっくりお召し上がりくださいませ。
食器は後ほど下げに参りますので、お食事が
お済みになりましたら、そちらの電話で
フロントにお知らせください。」
と仲居さんたちは丁寧に頭を下げて去っていった。
私たちは、お腹いっぱいおいしいお料理をいただいた。
仲居さんたちに食器を下げてもらい、ついでに布団も敷いてもらうと、照明を少し落として2人で窓際に座り、外を眺める。
「由里子、俺、今日の裁判が終わったら、
結果がどうであろうと由里子に伝えようと
思ってたことがあるんだ。」
何?
私は無言で大和さんを見つめた。
「由里子、俺はこの先、ずっと由里子を
守って死ぬまで一緒に生きていきたいと
思ってる。
だから…
俺と結婚してください。」
これは…
プロポーズ?
私は、心の中で大和さんの言葉を反芻して噛みしめる。
そして…
「はい。」
と答えた。
大和さんはポケットからジュエリーケースを取り出して開ける。
そこには、先日クリスマスプレゼントの指輪を直してもらった時に見た指輪があった。
『買うわけじゃないから、値段関係なく
好きなの選んでみてよ。』
そう言われて選んだ馬鹿みたいに高い指輪がそこに座っている。
「大和さん!?
これ… 」
「由里子はこれが好きなんだろ?」
嬉しそうに微笑んだ大和さんが、私の左手を取って、薬指にその指輪をはめた。
「よろしく。俺の奥さん。」
そう言った大和さんは、反対のポケットからもう一つ箱を取り出す。
「え?」
「これは、遅くなったクリスマス
プレゼント。」
そう言った大和さんは、今度は私の右手を取り、その薬指にサイズがピッタリになった指輪をはめた。
左右両方の指が突然キラキラして、なんだか落ち着かない。
落ち着かないけど…
嬉しい。
「大和さん、ありがとう。」
私はお礼を言うと、身を乗り出して大和さんに触れるだけのキスをする。
恥ずかしい…
自分からこんな事するなんて。
でも、どうしてもしたかったんだもん。
私は逃げるように大和さんから離れ、顔を伏せる。
けれど、大和さんはすぐに私を捕まえて、抱き寄せた。
「もう一度して?」
大和さんが囁くように言う。
恥ずかしい私は、首をブンブンと横に振った。
「由里子、お願い。」
大和さんはそう言って、私の顎に指をかけ、上を向かせた。
一瞬、大和さんと目が合うけど、恥ずかしくてすぐに逸らしてしまった。
「由里子… 」
大和さんはねだるように私の名を呼ぶ。
どうしてだろう。
大和さんにお願いされると、つい聞いてあげたくなる。
私は勇気を出して、再び大和さんにくちづけた。
すると、そのまま襟足を押さえられ、離れさせてくれない。
大和さんは、そのままいつも通りくちづけを深めていく。
大和さん…
息が上がるほどのくちづけに、私は、大和さんのシャツをきゅっと握った。
しばらくして、ようやく唇を解放した大和さんは、また囁くように言う。
「一緒にお風呂に入ろ。」
「え!?」
無理!!
私は大きく首を横に振る。
「なんで?
大丈夫。外は薄暗いし。行こ?」
大和さんに手を取られて引いていかれると、それ以上抵抗もできなくて…
「あの、こっち見ないでくださいね。」
私はそんなことを言いながら、部屋付きのお風呂であるのをいいことに、バスタオルで隠したままお湯に浸かる。
だけど、後から入ってきた大和さんにあれこれ触れられている間に、気づけば はだけてしまっていて…
私たちは、お風呂でもお布団でもお互いを求め合い、満たされて眠りについた。
それから、半年後、私は結婚した。
6月の最初の日曜日。
私の勤める図書館で初めてのイベント。
ロビーに赤いカーペットを敷き、バージンロードを作っての結婚式。
もちろん、図書館は休館日ではないので、開館している。
普通に本を借りに来た人が驚いて足を止める中、私は大和さんのもとへ嫁いだ。
大和さんにプロポーズされた翌日、指輪をつけて出勤した私に、優美が気づいた。
「由里子、それ!」
「うん。
一昨日、もらったの。」
私は照れながらも正直に話した。
それから数日後のミーティング。
議題は
〔図書館利用者を増やすために
どんなPRをするか〕
そこで優美が意見を出した。
「結婚式はどうですか?」
ホールで結婚式。
最近は、水族館や美術館など、変わった所で結婚式を挙げるカップルも多い。
幸いこの図書館は、教会風の尖塔形の屋根を持っている。
雰囲気としては悪くないかもしれない。
私をはじめ、他の人たちも賛成したので、市役所の上層部に申請書類を上げることになった。
しかし、一般的に結婚式を希望するのは週末だが、公共施設である以上、そのために図書館を休館させるわけにはいかないという問題に直面した。
そこで、私に白羽の矢が立った。
図書館を開館したまま、結婚式ができることを確認する意味も含めて、私たちにここで結婚式をするように言われたのだ。
大和さんに相談したら、
「由里子にぴったりの結婚式ができそう。」
と一も二もなく賛成してくれた。
テストということで図書館使用料は無料。
市の広報誌などでこの日は結婚式をするという告知をして来場者に極力迷惑をかけないように配慮して当日を迎えた。
前例がないことなので、準備は大変だったけれど、本が大好きで図書館が大好きな私にとって、ここで結婚式を挙げられるのは嬉しいことでもある。
大和さんのお父様が懇意にしてるというテーラー裁(たち)で作っていただいたウエディングドレスに身を包み、私は父と共に即席のバージンロードを歩く。
左右には椅子が並べられ、参列者が座っているが、そのさらに右奥には貸し出しカウンター、左奥には児童書のコーナーが見える。
「ママー、見て見て!
お嫁さん!」
絵本を抱えた女の子がこちらを見て叫んでる。
ふふっ
かわいい。
女の子のお陰で、緊張も解けた気がする。
ゆっくり歩いて、私は父のもとを離れ、大和さんの腕を取る。
神父役は館長。
ふふっ
館長の手が震えてる。
本人でもないのに、そんなに緊張するなんて。
私は、みんなに見守られて、大和さんの妻となった。
もちろん、仕事中の職員も参列者である。
貸し出しカウンター内には優美の他数名がフォーマルドレス姿で貸し出しや返却の業務をしている。
誓いの言葉の合間にもピッというバーコードリーダーの音が聞こえる。
そして、結婚式終了後には、館内の一般の利用者さんからも拍手をいただいた。
宮原書店で出会い、想いを通わせた私たちは、図書館で永遠の愛を誓った。
私は、死が2人を別つまで、いえ、例えどちらかがこの世を去ることになったとしても、永遠に大和さんを愛し続けるに違いない。
大和さん。
私に出会ってくれてありがとう。
私を見初めてくれてありがとう。
私を助けてくれてありがとう。
私を守ってくれてありがとう。
私を支えてくれてありがとう。
私と結婚してくれてありがとう。
ふたりで幸せになろうね。
─── Fin. ───
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
このお話は、『100本の鉛筆』のスピンオフです。
(スピンオフの方が10倍以上長い(笑))
100本の鉛筆を読んでいただいた方はお分かりだと思いますが、この2人の物語はこの後さらに波瀾に満ちたものとなります。
ですが、それはまた別のお話で…
ちなみに、このあと宮原家に大きな試練を与えるのは、皆さんが想像している通りの人物だと思います。
また次のお話で皆様に再会できることを願っております。
─── くっきぃ♪ ───
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