「愛ちゃん、今第一体育館で6組がシャトルランしてるらしいよ~」
私があーちゃんと武道場の隅で休んでいたとき、シャトルランを終わらせて戻ってきたグループが私達の方に話しかけてきた。私は思わず「え!?」と驚いた声で顔を上げた。
「なんでさっちゃんが知ってるの…!?」
するとさっちゃんがニヤニヤしながら、
「あーちゃんから聞いた!だって最近愛ちゃん楽しそうに笑うんだもん。なんかいいことあったのかな~って」
と私の前にしゃがんできた。「最近楽しそうに笑っている」そう言われて無条件に嬉しくなった。私もあの人に近づけてるのかもしれない。そう思うと嬉しくてまた口角が上がりそうになる。
でも、その後に「やっぱり気づかれてたのか」と思うと恥ずかしくて隠したくなって、「もー!!あーちゃんなんで言うの!?」と隣に座るあーちゃんを責めた。そんな私をお構いなしに二人は、「第一体育館に行こう」と私を引っ張った。
「違うクラスなのに見に行くなんて変だよ~!」と心配する私を余所に、さっちゃんは「大丈夫
、大丈夫!私たちで先生と喋りに来たふりしとくから~!」と私の背中を強く押した。
第一体育館につくと、シャトルランはもう50回を越えたところだった。一列に並んだ人の波が押し寄せては戻ってを繰り返している。
私たちはその波の邪魔しないように体育館の隅に3にん並んで座った。ずっと走り続けている彼らに私達は写っていないんだろう。誰一人として、私たちに気づいたような人は居なかった。
「ねえ、愛ちゃんの好きな人ってどこ??今走ってる?」
「えっと…」
私は走る一列の波の中を探す。今は走っているのだろうか?そんな疑問を抱いていたピントがしっかりと、走るあの人へと当てられる。
ーあ、見つけちゃった。