「あの、キキさんですよね?」
「はい」
「やっぱり!私大ファンなんです!握手してくれませんか?」
「いいですよ」
あれから三年後。
透が目を覚まさないまま、私は芸能界に入った。
もちろん興味本意で入った訳では無い。
透を助けるためのヒントを探すために。
事務所は自分で立ち上げてやった。
だってどこも、グラビアっていう仕事が多かったから。
そんな仕事をするために入った訳じゃない。
マネージャーは心音と心花がしてくれている。
まー、言ってもスケジュール管理が心音で心花がメイク担当なんだけど。
「今日の午後、モデルの撮影だよ」
「おっけ!相手は?」
「悠太と康太」
「お、あいつらか」
そう、鬼虎組のみんなもモデルとして活動している。
あいつらは遊びみたいなもんだけど。
「こんにちは。今日は、よろしくお願いします」
「よろしく。今日は、制服が衣装だからよろしくね」
「はい!」
控え室に戻りメイクを始めた。
春先の雑誌だからピンクを使って桜をイメージさせた。
「やっぱり、何回見てもこの白髪凄いよね」
「そう?」
「でも抜けると、黒くなるよね」
「凄いよね」
他愛もない会話をしていると勢いよくドアが開かれた。
「キキ!」
思いっきり抱きついてきたのは悠太だった。
3年だったため、身長は伸び雰囲気もがらっと変わった。
でも、性格は変わらないものだ。
「悠太!やめろよ!いい歳して」
「だってー」
止めに入った康太も全く昔と変わらない。
「康太……本当は来たいんでしょ?」
「……うん」
「おいで!」
「あんた達、今人入ってきたら変な光景だよ」
「女に男2人が抱き合って」
「変な言い方やめて。そろそろ離れて」
「うん」
「あれ?また髪色変わった?」
康太は、グレーから黒。
悠太は、ピンクから茶色になっていた。
「だって学生役だから大人しくしてきた」
「それが一番。っていう私はだけどね」
「地毛だからね」
スタッフが部屋まで呼びにきて、撮影が始まる。
さっきまで和気あいあいと喋っていたにも関わらず、顔つきは真剣な顔になった。
いくつかのポーズをきめ、3人で撮る。
撮り終わったらソロで撮影をし、次はペアになって撮影していく。
その撮影は夕方まで続き終わったのは、午後6時だった。
「明日の仕事ってなんだっけ?」
「また、撮影」
「マジかよ」
「次はスーツ」
「ぐぇ、肩苦しい」
「着物きてるお前が言うな」
「まーねー!」
「じゃ、また明日」
「ばいばーい」
今日も何も収穫がなかった。
そう思いながら、お父さんとお母さんの待つ家に帰って行った。