翌日になり透は、仕事のため妖怪界に帰ることになった。
寂しい気持ちを堪えながら鬼輝は、笑顔で送ってあげた。
部屋に戻り、鬼輝も王としての仕事を始めた。
作業を初めて3時間が経った頃、1本の電話が入ってきた。
「もしもし?」
『王さまー!大変でございます』
「どうしたの?ひよじぃ、」
ひよじぃ。
妖怪界で、着物などを売っている商人だ。
妖怪達からは信頼されているためみんなから「ひよじぃ」と呼ばれている。
『荒らされたんじゃ!わしの店が』
「荒らされた?誰に」
『烏ですよ。あヤツらは卑怯なことしかせん』
烏?もしかして、前喧嘩したあいつら?
もしそうだとしたら目的は、私たち。
関係ない人に手を出すなんて許せない。
「ちょっと待ってて、私が行く」
電話を切り、3人に連絡をとった。
もちろん来るということだ。
紫の生地にしろや赤、オレンジなど色とりどりの模様の入った着物に、キラキラした簪。
メイクは、赤を中心に使いつり目のようにした。
街の人たちから貰ったアクセサリーをつけ、3人の到着を待つ。
鬼輝の前を人間が通る。
だが、妖の事は一切見えない。
「お待たせ!」
「ごめん、着替えるのにてこずった」
「風呂はいってた」
〜心花〜
袴のような形の着物になっていてブルーで統一されている。
ラメで、蛇の形を表している。
足元はヒールを履いておりうごきやすそう。
もちろん女の子だからメイクもしている。
アイラインを太く引き強さを表している。
〜心音〜
ピンク色の着物に花柄の模様がたくさん入ったものになっていた。
可愛さを出したのか、アクセサリーを付けている。
もちろんただのアクセサリーでは無い。
毒が着いているものもあれば針が付いているものもある。
メイクは女の子らしい可愛らしメイク。
〜希音〜
家紋の入った袴に、羽織ものを着ている。
黒白、灰色で統一されている。
金の模様が入っており狼を表している。
4人とも角や尾、爪を出しひよじぃの元へと向かう。
移動の途中、鬼輝はあることに気がついた。
「お主ら、お面は?」
「喋り方が……」
「今は、王さまだから……」
「お面は?」
「持ってません」
「何故?」
「私たちは位が高いわけでもないですので、作らなくてもいいかと」
呆れたような顔をした王は、持ってきていた袋の中から3枚のお面を取り出した。
ソレは王と同じ、狐の形をしたお面だった。
王は、黄金。
希音は、緑。
心音は、ピンク。
心花は、青。
「それをつけろ。今回はしょうがないとして次からは絶対につけるのじゃ。」
「「ありがとうございます」」
ひよじぃの元に着いた時は、悲惨な光景が広がっていた。
町中の妖、妖怪達が反撃したのだろう。
無残に広がるのは、血だらけになったもの達ばかり……。
怒りか沸点に到達しそうだった。
医者や回復の能力があるものは数が足りず、このままではほとんどが死ぬだろうな。
「っ、許さない」
「お、おい。そこのおなご!ひよじぃは?」
「ひよじぃは、烏の集団に連れていかれました。」
「もうこの街にいないんだな」
「はい。先程これを王さまに渡せと言われました」
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この仕打ち、返してやる。
俺達は強い。
ひよじぃと言うやつは人質として預かろう。
一週間後、決着をつけよう。
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「っ!ひよじぃ……」
「王さま。大丈夫です。まずは、この者達の治療をしましょう」
「医者は何処に?」
「その必要はない」
「えっ?何故ですか!見捨てるのですか」
「五月蝿い。口を慎め」
「……」
周りの者達は、口を開かなくなった。
それでも治療の手を止めなかった。
空から白の丸いモノが降りてくる。
それに触れた妖怪達の傷がみるみる小さくなっていき、綺麗な状態になった。
「これは?」
「ありがとございます。王さま」
そう。それは王の力だった。
皆の者は膝をつき王に感謝した。