全然足りないのは、僕の方だよ。
美結がいつもいつも、一瞬も欠けることなく僕にくれる幸せに、僕はどう返せばいいのか、ずっと考えているんだ。
……でも、答えは見つからなくて。
「……美結」
「はいっ」
「俺も、同じこと考えてた……」
「……へ?」
「俺も、どうすれば美結がくれる幸せに、お返しが出来るかなっていつも考えてる。でも、考える端から美結はまた新しいものをくれるから……。ね、美結の一番の幸せって、なに?」
美結の両手をとって訊ねる。
美結は顔をゆがませた。
「――っ、またそうやって……」
そしてうつむいた美結のスカートに雫が落ちて、色を濃くする。
「私、は……想が、傍にいてくれるのが一番幸せで、一番嬉しい……。何も、しなくてもいい。言葉がなくても、触れていなくても、ただ……想の隣は、私が在りたい……」
――なんでそこまで。
「同じだ……」