「九時とか十時とか言ってた。毎年のことだから慣れてるから」

「………もしかして毎年、俺に作ったチョコ、一人で食べてたりした?」

「うっ……想、なんでそんな読みが鋭いの……」

「なんとなく思っただけだけど……。ごめんな。俺が気付かなかったから……」

「謝らないでっ。想に片想いだったのは苦しかったけど、でも……楽しかった、から。想のライバルは私だけで、そうやって想の傍にいるのも、私、好きだったから。それに、今は……今年は、全部渡せた」

ふわっとした笑みを見せる美結。

……なんでそういじらしいことばかり言うんだ……。

僕をどれだけ惑わせば気が済むんだか。

「……想?」

「黙って」

「っ……」

美結の後頭部をとらえて、口づけた。

可愛い可愛い、僕の美結。

どちらかが先に欠けたときの約束はした。

それでも、いつか来るその日そのときまで、僕は美結のものだし、美結は僕のものだ。

僕の心には、死のその先にも美結がいる。