「食べさせ、って……あ、あーん、てやつ?」
「……どのやつ?」
美結の比喩がよくわからずに返すと、美結は顔を横にぶんぶん振った。
「な、なんでもないっ。た、絶えさせればいいんだよね!」
「絶えちゃダメだろ」
まだ絶滅する気はないよ。
美結と結婚もしていないのに。
「噛んだだけだよっ。はいっ。口開けてっ」
美結はもう勢い任せだというくらいの慌てようで、僕の口元にチョコを突き出した。
美結の白く細い指に唇を近づけて、当然のように指ごと喰った。
「想⁉ 指!」
「いや、溶けたチョコついてるから……」
せっかく美結が作ってくれたもの、もったいない。
「だからって食べないでっ」
「美味しいよ?」
「チョコが、だよねっ⁉」
「うん」
僕が答えると、美結は心臓の辺りを押さえて深呼吸し出した。
……大丈夫かな。