美結が僕を想って作ってくれたものなら、それは余すことなく全部僕のものだ。

「全部、ちょうだい?」

腕をゆるめて、美結の顔を覗く。

……なんでそんな泣きそうな顔をするの。

ぽんと頭を撫でる。

「だって……想、チョコは受け取らないって……みんな、言ってたし……」

「ん? あー。……ずっと美結からもらえなくてショックだったから、なんか他の女子からもらうのは……美結に負けた気がして。いわゆる本命ってやつは、受け取らないって決めてた。あ、クラス中に配ってるやつとかはもらったけど」

「うん……」

「美結、女子とは交換してるのになんで俺にはくれないんだろう、とは思ってたけど。……尚にはあげたの?」

「へ? 尚? 尚には作ったこともないよ?」

あれ。そうなんだ?