「大丈夫?」


放課後、教室に1人残る仁科くんが泣いているように見えて、思わず声をかけた。


「びっくりした、森田か」


仁科くんは幾分か目を見開くと、泣いたような顔でくしゃりと笑った。


目元が微かに赤い気がした。


「泣いてた?」


「なんで?」


「…さっき、七瀬先生に会った」


はは、と仁科くんが笑う。


「…フラれたわ。やっぱ生徒は生徒なんだってよ」


泣きそうな顔だと思った。


どこか悲しげで寂しそうなこの笑顔を、私はよく知っている。


「でも告って吹っ切れた!俺、生徒だもん。仕方ない仕方ない」


これも、きっと嘘。


仕方がないなんて思ってないくせに。