いま思えば、飛鳥くんと喧嘩すらしたことない。


たとえどっちかが不機嫌になっても、どっちかが上手くご機嫌を取る。そして、気付けばいつも通り。



そんな感じでずっとやってきた私たちだったから、この高校に入学して、私は驚いた。




飛鳥くんは、モテる。……と。




そりゃあ、小さい頃からカッコいい容姿だなーと思ってはいた。


薄い唇に、通った鼻筋。少し長い前髪から覗く、切れ長二重。おまけに身長だって、今や170センチ後半だ。




だけど、こんなにもモテる人間だったなんて想定外過ぎた。


飛鳥くんはあまり他人に関心を持たないから、中学までは友達も固定した人だけ。



女の子たちもそんな飛鳥くんに近寄りがたかったのか、影でひっそりと人気があったくらいだったから。