だよね!?と言いたい気持ちを、必死にこらえて、菊川くんから荷物を受け取ろうと手を伸ばした。
「え、せっかくだし中まで持っていくよ?」
ところが、菊川くんは段ボールを私に渡そうとはしない。
こういうところが、女の子のきゅんポイントなんだろうなぁ。でもそれはきっと狙ってやってるわけじゃない。心の底から良い人なんだろう、この人は。
でも。
「ううん。あとは私1人で大丈夫。飛鳥くんに怒られちゃうから」
「飛鳥?」
いくら菊川くんが優しいからって、ここから先はダメだ。飛鳥くんにバレたら大変。
「うん、飛鳥くんから言われてるの。密室、っていうの?他の誰もいないところで、男の人と2人きりになるな、って」
小学生の頃から耳にタコができるほど言われてきた飛鳥くんからの言いつけ。
これを破った日には、きっと飛鳥くんは不機嫌どころじゃ済まないだろう。怖いから、一度も破ったことはないけれど。