「……ん」


くすぐったそうに、花帆が身をよじった。


それだけでドクンと心臓が波打って、必死になって理性を保つ自分がいる。



触れたいと思うのに、これ以上触れたら自分がどうにかなってしまいそうだ。


花帆のことになると、俺は自分がわからない。けれど、一番俺らしくいられる瞬間だとも思う。




「花帆」

「……あす、かくん……?」



名前を呼ぶと、ぼんやりとその瞳は開いた。


ゆらゆら揺れて、涙目で。たぶんまだ、夢との境目。



「花帆」


もう一度名前を呼んだとき、その瞳は今日初めて俺をとらえた。


俺だけを、とらえた。