私、曰野あおいは、昔から、いや生まれた時から
人を好きになれない体質。
案外そういう人って珍しくないみたい。

私は今高校2年の17歳。
だから周りは恋バナばかり。

でも恋をしたことがないうえに
暗い私はいつもボッチ。

まぁしょうがないよね…

てか、こんなこと思うのも今日で終わり。
今日は夏休み前の終業式。
やっとこんなつまらない学校生活から解放される。


*


なんて思ってたのに、気がつけば明日は始業式。
夏休みなんかあっという間に終った。
憂鬱だけど、明日のためにベットに入って目をつむる。
学校なんか、行きたくないのに。


朝になって目が覚める。
はぁ、朝来ちゃったな。そりゃ来るよな。
これで来なきゃ逆に怖いわ。
なんて思いながら制服に着替えた。

準備をすませて学校に向かう。

教室に入って
夏休み前と変わらず、誰とも会話を交わさずに、
すぐに自分の席につく。

朝のHRが始まった。

すると担任が「今日は転校生が来ています」と言った。

周りは「男かな?女かな?」「男かなイケメンが良いなぁ」「そこは美少女だろ!」
なんて会話が出てきてる。

まぁ転校生なんて別に私には関係ないんだから。

そんな事を思っていると

少し古めの教室のドアがガラガラッと
大きな音をたてて開いた。

そのすぐあと

「はじめまして。北海道から来た松井春真です。
昔はこっちに住んでいたけど、小さい時なので
あまり記憶がありません(笑)なのでぜひ
仲良くしてください。」

と聞き慣れた声が私の耳に入ってきた。

すると春真は私の方をみて

「あれぇ?あおいじゃない?まだこっちにいたんだ!」
と笑顔で話しかけてきた。


その瞬間、私の胸は今まで感じたことのない速さで
鳴った。

きっと春真に…恋をしたからだ。


昼休み、
昔からの知り合いと言うことで、
私は春真の校内案内役に選ばれた。

春真はそこそこカッコいいから
女子からの視線が痛かった。

そんな中、沈黙を破るように、元気な声で
春真が話しかけてきた。

「ほんとに久しぶりやね!あおい、
まだこっちおったんや!俺友達つくんの苦手だから
しばらくは小学生の時みたいに仲良くしてな!」

と満面の笑みで言った。
実は春真は私の幼馴染み。性格は真逆だけどね…

「は、春真はさどうして急に帰ってきたの?」
小さな声でそう聞いた。

心臓はこんなに大きな音でなっているのに。

すると春真は今までの事とは違う、
強くしっかりとした声で言った。

「俺。こっちにずっと昔から好きな人がいる。
そいつにどうしても告白したいんだ。
だからさ、あおい、手伝ってくれないか?」

胸が…痛かった。

「へ…へぇ良いよ。手伝ってあげる!
ちなみにさ、好きな人って誰なの?」

断りたいところだが、春真の好きな人が知りたいという
一心で協力することを約束してしまった。

すると春真が
「宮野ひなた」と小さな声で言った。

ひな…た?

あぁなんだ、ひなただったんだ。私とは正反対だもんね。
顔も声も性格も。

ひなたは私と春真のもう一人の幼馴染み。

私たちは昔、いつも3人で遊んでいた。

ひなたは明るくて可愛くて元気で、名前の通り
太陽みたいな子だった。

「で、手伝うって何すんの?」
震える声でそう聞いた。

「実は俺、9月には向こうに戻らなきゃならない。
だから明日の放課後、ひなたにコクりたいと思ってる。
だから、あおいには理由をつけて、ひなたを
呼び出してほしい。良いかな?」

「う、うん!大丈夫!成功しなさいよ!」
と作り笑いで言うしかなかった。



それから午後の授業はまったく頭に入ってこなかった。

ひなた…かぁ

春真はひなたみたいな子がタイプなんだ…
目に涙が滲みながらそんな事を考えていた。

頭がグラグラしたけどなんとか家に帰り、
スマホを手に取った。

L○NEを開くと「新しい友達」の場所に
「松井 春真」という名前があった。

友達追加をしてトーク画面を開く。
そこに
「明日、どこに何時にひなたを呼び出せば良いの?」

と、打ち送信ボタンを押す。
するとすぐに既読と着信音がなった。

「できれば中庭に、放課後だから…
午後の5時に呼んでほしい」

と返事がきた。
自分の胸が痛んだことを
これ以上、自覚したくなかったから
「了解」と書かれた可愛らしいスタンプを押して
急いでスマホを閉じた。

朝になり、目が覚める。

こんなにも学校に行きたくない日なんて初めてだ。
でも行かないわけにはいかないから、
いつものように支度を済ませ、家を出る。

教室に入ると、いつもとは違い
「あおい!おはよーー!」
と、元気な声で春真が話しかけてきた。

でもできるだけ、春真の顔を見たくなかった私は
「おはよ。」
と冷たい一言であいさつを済ませ
自分の席についた。

授業が始まった。
でも頭の中はひなたと春真のことだけ。

その時ポケットに入れていたスマホが
ピコンと可愛らしい音でなった。

誰からだろ。と、先生にバレないように
こっそりスマホを開くと、
昨日の夜から開いていなかったL○NEの画面に
春真からのメッセージがあった。

メッセージ内容を開くと
「なぁ、その…ひなたにメッセージおくってくれた?」
と書かれた文があった。

その瞬間、まだひなたに
L○NEをしてなかった事を思い出す。

適当に「ごめん」と書かれたスタンプを送り
急いでひなたとのトーク画面を開く。

そこに
「ひなた、授業中にごめんね。
今日の17時に中庭で会える?」
とメッセージを書き、少し震える手で
送信ボタンを押した。

するとすぐに既読がつき
「大丈夫だよ!じゃあ17時に中庭に行くね!」
と返ってきた。

そのトークをスクショして
春真に送る。
すると
「あおい、ありがとう!」と返ってきた。

これで、良いんだ。

それから授業中、春真達の事が頭の中をグルグル
回って苦しかったから、結局授業中はずっと寝ていた。

そんな事をしていたから、学校なんかすぐ終わり
放課後になった。

帰り際、春真に
「がんばれ」とL○NEを送り、すぐに家に帰った。
が、帰っている途中、明日提出のレポートを学校に
忘れてきたことを思いだし、いやいや学校に引き返した。

レポートを取り、校門へ向かう。
時刻は17時5分。

私が校門に向かうにはどの道を通ろうと
絶対に中庭の横を通らなくちゃならない。

しかたないが家に帰るためだ。
中庭の横を通る。
一瞬、春真とひなたの姿が見えた。

だが走って校門に向かう。

すると校門についてすぐに
私のスマホはピコンとなった。

スマホを開くと、春真から

「あおい、告白成功した!ほんとにありがとな!」
と言う文章とともに
春真とひなたのピース姿の写真が送られてきた。


なぁんだ、やっぱり成功するんじゃん。
やっと人を好きになれたのに
私ってほんとについてないな。

そう思うと涙が止まらなくなった。

周りの目なんか気にせずに声をあげてないた。

どうせ今は放課後なんだから
学校には部活動生しかいない。

どんどん、どんどん涙が出てきた。


「大丈夫?」
誰かにそう言われ
涙でぐちゃぐちゃの顔をあげる。

するとそこには、クラスメイトの
高梨悠里くんが立っていた。

高梨くんの顔を見るとなんだかホッとして
高梨くんに抱きついてまた泣いた。

その間、高梨くんはなにも言わず、
私を抱きしめてくれていた。