気づくと僕はビルの屋上に立っていた。
スマホを持っていた。
'視聴者11万人'目の前には警察が数名。
男かよと聞こえた気がする。
「こういう形で死ぬに至った経緯ですか、
僕は大人になりたくないんですよ。
なぜかって小さいころから受けていた父からの暴力と連日テレビで放送される
嫌な大人のニュース、それに大人って無駄に生きることを強いるじゃないですか、
毎夜毎夜アルコールで心を浄化し頭を狂わせ無理をして生きている。
そんな大人が多すぎて大人にいいイメージがありませんでした。
僕もいつか大人になると気付いたときは本当に絶望しました。
でもその前に死んでしまえばいいんだという画期的な考えが頭に浮かんで、」
こんなにも僕はすらすらと喋れたのかと興奮した。

「おい!君!今すぐ配信をやめなさい!死のうとすることもやめなさい!
生きていたらいいことがあるから!」

「それ以上近づかないでください。飛び降りますよ?
なんでそう生かそうとするんですか、
僕はあなた方が楽をするために生まれたわけじゃありませんよ。
あ、大人になって生きていていいことはありましたか?
もちろんあなたにとってではなくて僕にとって。」

警察はじりじりと進めていた足を止めた。

「もちろん親や友達はもちろん助けようとしてくれました。
でも、成長の過程で培った人間不信のおかげで何も届きはしませんでした。」
僕のとても幼稚で飛躍した考えに対しての反応はやっぱりいつも通りだった。
それが嬉しいのか悲しいのかはよくわからないがさらに早くここから消えたいと思った。
呆れ、好奇、心配、無関心、怒り、
とても幼稚で見ていられないようなことをしている子供を片手間でなだめようとする人、
面白いおもちゃだと思い飛び降りることを催促する人、
人だかりにイライラしている人。
様々な人が各々の形で楽しんでいた。

「そろそろにします。
皆さんが先にどうぞ。続きは下で良い子して動画を撮っている人からもらってください。」

そういうと、スマホを落とした。
数秒後ガシャンという音とともに人々が騒ぎ始めた。

「では。」

と挨拶をし、数秒後パァーンとグシャという音が同時に、騒いでいた声をかき消した。