それからの試合は、松岡さんと加藤さんペアも
見事なタイムを出して圧倒的な差で1位になった。
パラリンピックの切符も確実だろう。
さすがだわ!!
そして運命の100メートル 決勝。
課長と永井さんを率いるチームが争うことになった。
両者は、真剣なためピリピリしている。
頑張れ……課長。
すると周りの観客も声援してくれた。
女性の観客は、永井さんファンも多かったけど
子供や男性など多くの観客は、
課長の応援をしてくれた。
「頑張れー日向選手!!」
「期待してるぞー日向選手!!」
応援の旗を持っていた子供達もいて
課長の人気の高さを実感した。
私は、観客席の奥の方で立って見ている
1人の外国人男性に気づいた。
あ、あの人……さっきぶつかった人だわ!?
ここに居るということは、応援客?
不思議に思いながら見つめていると外国人男性は、
私に気づき目が合った。
すると手をひらひらと振ってくれた。ニコッと笑いながら
私は、恥ずかしくなり慌てて前を向き直した。
まさか、覚えているの!?だとしたら余計に恥ずかしい。
ドジなところを見られたし……。
心臓がドキドキと高鳴ってしまった。
しかし、そんな私とは関係なしに決勝が始まった。
課長と永井さん。
そして数人の選手がスタートラインにつく。
皆、義足をつけており強そうだ。
中には、両足が義足の選手もいた。
構えると合図の号砲が鳴った。その瞬間。
課長と永井さんは、真っ先に先頭に立った。
お互いに一歩も譲らない。
永井さんのフォームもとても綺麗だった。
それに若さもあるためエネルギッシュな走り方をする。
課長を苦しめるような速さを持っていた。
しかし、それなら課長も負けてはいない。
鍛え上げられた身体に長年やってきた経験。
何よりストイックな姿勢は、走り方にも出ている。
とにかく前に突き進む。速い……。
両者未だに一歩も譲らない。
50メートルに差し掛かった瞬間。
課長は、永井さんの一歩半、前に出てきた。
そして少しずつ距離を広げ始めた。
勝てる!!もう少し……。私は、そう確信した。
「亮平さーん。頑張って~!!」
私は、無我夢中で大きな声で応援する。
こんな大きな声を出したのは、いつぶりだろうか?
周りの声援も負けないぐらいに大きい。
「日向選手ー頑張れー!!」